村上龍 裏JMMの海岸 Q:1137

Q:1137
 政府は、TPP (環太平洋パートーナーシップ協定)への参加を「明言しない」という方針を出したようです。TPP へ参加した場合、どの層に利益があり、どの層が不利益を被るのでしょうか。

 TPP への参加によって不利益を被るのは農業関係者のみで、TPP への参加はほとんどすべての国民に多大な利益があると思う。ただここで厄介なのは食料自給率の低下による食糧の安全保障の問題で、目の前に大量の美味しい人参があるにもかかわらず安易には飛びつけない。

 では目の前の人参を諦めればいいのかと云うと、そう単純ではない。今回の意思決定はTPP に参加した場合で考えるよりも、参加しなかった場合で考える方が妥当だ。競争相手である他国がこぞってTPP やFTA に次々と参加し、日本だけが何もアクションを起こさないでいたらどうだろう?

 輸出製造業はすべて海外移転し、それを当て込んだ内需型企業や空洞化を恐れた優秀な人材までもが後を追う。日本国内には大勢の老人と低スキル労働者だけが取り残されるといった事にならないだろうか?

 進むのも地獄、立ち止まるのも地獄。だとするなら、いっそ思いっきり突き進んで、農業に関する画期的なアイデアを待つという方が潔いと思う。