村上龍訳 リチャード・バック イリュージョン 5

 村上龍訳 リチャード・バック「イリュージョン」。主人公の気ままな飛行機乗り・リチャードは、ある日自分とまったく同業の飛行機乗り・ドナルド・シモダと出逢います。そしてシモダはなんと救世主だったのです。

 救世主なんていうと、普通はキリストを思い浮かべるんでしょうね。僕の場合は映画「マトリックス」のネオが真っ先に頭に浮かびましたけど。いずれにしても、常識では考えられないスピリチュアルな力を神から授かり、自らを犠牲にしても苦境にある民を最大限の努力でもって救う人の事ですよね!

 シモダも、物を空中に浮かべたり、雲を移動させたり、池の水の上を歩いたり、霊を呼び寄せたりと、超自然的な能力を持っています。こんな事を容易くやってのけるくらいですから、シモダはまさしく救世主です。

 ところがシモダは一風変わっています。キリストやネオとは違う。どこが。面倒くさいんです、人々を救うなんて事が面倒くさいんです。他人の事なんてどうでもいい、自分だけが楽しければいい。そう考える救世主なんですよ!