村上龍 vs 村上春樹 ウォーク・ドント・ラン 12

 「村上龍 vs 村上春樹 ウォーク・ドント・ラン」、村上龍によるあとがきです。

 「村上春樹のことを考える時、ある情景が浮かんでくる。知りあったばかりの音楽好きの少年が2人、部屋でレコードを聞いている。2人共、目を輝かせている。音に心を奪われているため会話を交わさない。2人は何回も何十回もレコードを回す。そして窓の外が暗くなった頃、1人がいいなあと言って、もう1人がうなずいただけで、2人の少年はお互いの部屋へと帰っていく」。

 ここで少年達が聴いているレコードが、Venturesの「Walk, Don’t Run」なんだそうです。この本のタイトルはこんなとこころから来てるんですね。それにしてもこの情景、目に浮かぶようですよ。手にしたレコード盤こそ違っても、男の子なら誰にもこんな体験があるんじゃないですか?

 「2人の少年はそれぞれの部屋で、僕らが演奏家だったらいいのになあ、と考える。僕らが演奏家だったら、あのいかした曲を一緒にやれるのになあ。小説家は、同じ曲を演奏することができない」。