村上龍 vs 村上春樹 ウォーク・ドント・ラン 9

 「村上龍 vs 村上春樹 ウォーク・ドント・ラン」。物語の結末に用意されている、たった数行のある部分を書きたいがために、そこに至るまでの長い文章を延々と書き続ける、これが作家の仕事なんでしょうね!

 「コインロッカー・ベイビーズ」が、ダチュラによる破壊を書きたいがための物語なら、「海の向こうで戦争が始まる」は、対岸で戦争が始まるんだという事を書きたいがための物語だったようです。戦争によって何かが大量に破壊されるには、破壊される対象のディテールをせっせと書かなくちゃならない。

 「戦争を書いたときはね、早く海のこっち側に持って行きたいと思いながら書いたんですよ。ぼく本当に嫌いなの、あの衛兵とか洋服屋の話書くの。大嫌いなんですよ。でも、書いとかないとあとで壊せないからね」。

 ちなみに「限りなく透明に近いブルー」は、リュウが迎えたあの朝を書きたかったんだそうです。とにかくその部分に至るまではひたすら我慢あるのみで、なんと、原稿用紙の隅にがまんと書いたりしてたらしいですよ!