村上龍 コインロッカー・ベイビーズ 30

 「サーファーかい。白いスーツできめてるところ見ると、サーフシティ・ベイビーズだね」。「いや違う、俺達は、コインロッカー・ベイビーズだ」。

 ついにダチュラを手にしたキクとアネモネが東京に舞い戻り、立ち寄った先のバイク店の店員と交わした会話がこれです。村上龍「コインロッカー・ベイビーズ」で、キクのセリフとして最も有名なものです。そしてタイトル以外で、唯一コインロッカー・ベイビーズという言葉が登場する箇所です。

 コインロッカー・ベイビーズとは、この世に不必要な人間達の総称です。そしてキクは、ここで初めて自分達をコインロッカー・ベイビーズだと名乗ります。しかも自信満々の態度で。オマエは不必要な人間だと告げた者たちへのキクによる最終的な返答が、ダチュラとこのセリフです!

 又、キクのセリフにある俺達とは、アネモネではなくハシを指しています。キクはハシの気持ちも代弁したかったんです。誰からも必要とされてなくても、俺達は堂々とこの世界を生き抜くことができる、俺達を見てくれって!