村上龍 コインロッカー・ベイビーズ 2

 村上龍「コインロッカー・ベイビーズ」。1970年代、コインロッカーの中に、生後間もない赤ちゃんをおきざりにする事件が多発しました。社会現象とまでなったようです。赤ちゃんは死亡するケースがほとんどだったとか。

 不幸にも、コインロッカーに遺棄されてしまった赤ちゃん達が、奇跡的に死を免れたとき、その赤ちゃん達はその後の人生をどう生きるのだろう。いや、そんな第三者的な穏やかな話ではすみませんよね。誕生とほぼ同時に、どう生きるかなんていう選択の自由がないほど重いモノを背負ってしまったんですから。この子達の未来が明るいとはとても思えないし、どう生きるのかというよりも、このようにしか生きられないと高を括るしかない。

 でも、高を括ってもいられないんですよ。どうしてかっていうと、この子達の人生の中に、あっという間に読者が引き込まれてしまうからです。

 日向に立っているだけで眩暈がするような暑い日、それぞれ別々のコインロッカーから産まれてきたこの子達の名が、キクとハシです!