村上龍 ラブ&ポップ 10

 村上龍「ラブ&ポップ」でおそらく最も有名な、キャプテンEOの言葉。 

 「こんなことしちゃだめなんだよ、名前も知らないような男の前で裸になったりしちゃだめだ、それを知ったらすごくいやがる人がいるんだ、誰にだって必ずいる、そいつが1人でいる時に、悲しくて辛くて泣きそうで1人でいる時に、そんな時に、そいつの大切な女が男の前で裸になってるって知ったら、どんな気分だと思う。お前はわかってない、こういう時、自分のことなんか誰も考えていないと思ってる、こんな胸とか触られて、まっ裸で、こういう時に、どこかで誰かが死ぬほど悲しい思いをしてるんだよ」。

 この言葉は裕美の心を完全にとらえます。援助交際が何故いけないのか、という問いに対する他の誰もあまり言うことのない説得力ある答えですよね。この部分が作品のクライマックスなのも間違いないと思います。

 でもちょっと待ってください。他の作家ならともかく、龍さんが他人が悲しむからというような理由を、本当に持ち出してきますかね?