村上龍 愛と幻想のファシズム Returns! 5

 村上龍「愛と幻想のファシズム」、すべてがトウジの白昼夢説。これはゼロとの出逢いからラストまですべてが、トウジによる幻想だと考えるのです。野望に燃えたトウジが、たまたま訪れた陽の沈まない街イヌヴィックにおいて見た夢のまた夢、それが「愛と幻想のファシズム」というワケです。

 つまり「愛と幻想のファシズム」とは仮想の闘いです。仮想である以上、この闘いでトウジが完全勝利していなくとも、最強のトウジの誕生をトウジ自身が自覚していなくとも、それはトウジの想定範囲内なのです。

 では何のための闘いだったのか。もちろん来たるべき闘いに勝利するためです。この戦闘シミュレーションにて、トウジはゼロを乗り越えゼロを内包した。最強のトウジの誕生、その事をトウジが自覚するのは夢から醒めた後、物語を閉じた後です。次なる闘いでトウジに葛藤はない。読者を待ち受けているのは、トウジによる完全なる破壊です。(なんという暴論!)

 今は嵐の前の静けさ。最強となったトウジの、本当の闘いはこれから!