村上龍 「希望の国のエクソダス」取材ノート 6

 ポンちゃん達の未来にほんの一瞬見え隠れするちょっとイヤな感じのする暗雲、の続きの続きです。なんと、村上龍「希望の国のエクソダス」取材ノートを読むと、暗雲どころか、龍さんが連載途中において、ポンちゃん共和国を最終的に崩壊させようと考えていた事が分かります。

 その伏線がASUNAROの下部組織であるUBASUTEです。文字通り、姨捨の事です。もちろん実際に捨てちゃおうとかそういう過激な事ではないです。ただポンちゃん達の根底にある思考は徹底したグローバリズムです。そしてUBASUTEのような行き過ぎた弱肉強食の世界観がある種のトリガーとなって、共和国がいずれ崩壊するというシナリオだったようです。

 この当時は市場原理主義に対する過度の期待感があった時代ですよね。でも龍さんはそれに孕む危険性を充分に認識していた、で、警鐘の意味も込めて、崩壊へと導かせようとしたんだと思います。

 崩壊させなかった事。たいへん誠にありがとうございます。