村上龍 タナトス 11

 まだまだ続く、村上龍「タナトス」。レイコの正体が露わになったからといって、レイコ本人が受け入れたからといって、これでこの物語が完全に終わっちゃうというのは、なんかイヤじゃないですか。寂しいですよね。な~んて思ってたら、ちゃんと龍さんはエピローグを用意していました。

 実はこのエピローグも、客観的事実だけを積み重ねていけばおそろしく哀しいんですよ。でも「事実だけを捉えれば寒気がするほど怖いんだけど、ウエハラくん本人が満足してるんだからイイんじゃない」の「共生虫」と同じで、レイコが楽しそうだからイイんじゃないって思えるんですよね。

 「エクスタシー」や「メランコリア」とは打って変わって、静かで綺麗で上品なラストシーン、まるで映画のようですね。3部作を締めくくるに相応しいです。

 龍さんがこのエピローグを用意したのは、読者のためでも作品のためでもないでしょ。レイコというある1人の女性のためにですよね。そしてカタオカケイコとヤザキにも敬意を表して!