村上龍 イビサ 10 & 11

 村上龍「イビサ」。webである女性が書いた「イビサ」への想いを偶然に目にし、震えるような感覚を覚えました。マチコと同年代だと思われるこの女性、はっきりと私にとって大切な小説と言い切った上でこう書いていました。

 「初めの半分は、仕事に行く前、布団の中で読んだ。仕事にいきたくない病にかかっているわたしは、家を出る二十分前(ときには十分前)まで布団の中にうずくまっている。仕事場の人たちからは、きっと想像できないはずだ。小説の中で四肢やペニスを失う人々より、これから出向かなければいけない社会のほうが、わたしにとってはよほど怖い」。

 特別何かを感じる事もなく日々を垂れ流し生きている僕にとって、ハンマーのような衝撃的一文でした。こんな破滅的な物語を出勤前の朝の布団で読むという行為、その意味、日本の社会を覆う空気はマチコ達の身に起こる出来事よりも更に重いのだという現実、それでも出向いていく彼女たち。

 僕の中で、マチコと彼女がシンクロしちゃったんですよ!

 布団の中で確かに、彼女は「イビサ」から何かを抜き取った。

 「イビサ」から目を背け、その内容を侮蔑するのは容易です。勝手な想像なのですが、彼女の眼に映ったマチコはひたすらキラキラしていたんじゃないですか。僕のように2度も再読をしてイロイロとこねくり回す事などせず、瞬間的に「イビサ」から重要な何かを抜き取る事が出来たんじゃないかな。彼女にとってのマチコ、それは僕のキクなのかもしれない。

 「イビサ」を悪趣味で下品と簡単に決めつける人達が多く一方で、大切な小説と言い切る彼女のような女性がいる事、そしてそう思う人は意外に多いのかもしれない事。文学っていいなぁって心からそう思う!

 ☆彼女の名はニコさん☆
 The Velvet Underground & Nicoの、あのNicoさんを連想させるキュートなお名前。連絡をとって掲載の許可をもらいました。「ジョバンニのゆくえ」という、ちょっと不思議でキラキラしたサイトをお持ちの小説家の卵です。