村上龍 イビサ 8

 村上龍「イビサ」。モロッコ・タンジールの街並みを離れた360度展望の高台、夕暮れによって地平線までの空気が1秒ごとにグラデーションを変えるこの高台で、マチコの耳にモスクから突然コーランが聞こえ始めます。無数のギザギザの矢印が空に飛んでいくかに見えたというコーランの音。

 龍さんって、一般的には都市型の作家だと思われていますよね。洗練されたセンスをもって都会に生きる人達ばかりを数多く描いていますし、何て言ったって舞台設定における最多登板は高層ホテルのスイートでしょ!

 でも、龍さんの描く風景で僕が圧倒的に好きなのは、都会を離れたときの自然の風景なんですよ。「愛と幻想のファシズム」のイヌヴィックや北海道大雪山、「悲しき熱帯」に登場する熱帯地、ウエハラくんの野宿の山。僕の頭の中でいつまでたっても消えない映像となってるんですよね!

 タンジールで見た夕暮れのコーランを、マチコは神の光源と何度も呟き涙を流します。今までの人生、景色で泣いたことありますか?

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