村上龍 イビサ 5

 村上龍「イビサ」は不思議な作品です。精神科を退院したマチコが、未知のヨーロッパでDrug、Sex、バイセクシャル、暴力、殺人、人身売買、人体切断といった事を体験していきます。このように書くとおそろしく暗い物語を想像しますよね。ところが当のマチコが異様に明るくパワフルなんですよ!

 突き抜けちゃっているというか、自由な世界に解き放たれているというか、とにかくアッケラカンとしている。これだけ背徳的なモチーフがてんこ盛りされているにもかかわらず、なんか正統派冒険小説を読んでるような錯覚に陥るんですよ。ねっ、不思議な作品でしょ?

 マチコは、ヨーロッパとマッチングしたんだと思うんですよ。逆を返せば、日本にマチコの居場所はなかった。マチコにとっての日本は、精神科のお世話になってしまうような国だと言う他には何もない場所だったんです!

 水を得た魚って事ですかね、ヨーロッパのマチコは。マチコがどんなに破壊的に生きようと、水を得た魚を見るのって気持ちいいですから。