村上龍 イビサ 2

 昼間は自動車会社の受付に座り、夜はいつも違う男と寝て、不定期に妻子持ちの自由業の男と変態的な性行為をする。それが私のすべてだった。

 村上龍「イビサ」。主人公のマチコは、ある日突然、路地裏の衣装を捨て、自由業の男のオフィスに長い事どうもありがとうという意味のFAXを入れ、最も嫌いだった課長にあなたは蛆虫以下の人間ですと相手の目を見て言って会社を辞め、その直後から黒々と渦を巻き微妙にその形を変える髪の毛の幻覚を見るようになり、1年以上にわたり精神科に入院することになる。

 いやぁ、「タナトス」のレイコに続き、「イビサ」のマチコもいきなりイッちゃってますね。何か予兆のようなものがあったかどうかはともかく、狂気の世界とのボーダーラインって、いとも簡単に踏み越えられちゃうんですよね。これは小説の中だけのことではなく、現実においてもそうでしょ!

 狂気って日常なんですよ。マチコもいたって身近な存在です。そんなマチコにシンパシーを感じる、この作品、まずはココからじゃない?