村上龍 タナトス 4

 村上龍「タナトス」。「エクスタシー」のSM & Drugのイメージがあまりに強烈なために、3部作全てがSM & Drugに彩られているような錯覚に陥りますが、「タナトス」においてSM & Drugは風景の1つにすぎません。「タナトス」の主要モチーフとして登場するのはChild Abuseです。

 レイコの父親は離婚した後に酒に溺れるようになり、泥酔したある日、川床に落ちます。迎えに来たレイコに、顔の骨を砕き血だらけになった父親は、「レイコ、誰が呼んできてくれ」と助けを求めます。小学3年生のレイコは2番目の母を呼ぶことはせず、代わりに近所の人を呼んで父親を助け出します。その事故以来、父親はレイコを突然殴るようになります。

 Child Abuseといえば「ピアッシング」をはじめとして、90年代の龍さんの作品には幾度となく登場してきましたよね。

 でも、まさかレイコがその対象となるとはちょっとオドロキです。 パリ在住で女優、類い希な美貌、華麗な日々。方や、背負いきれないトラウマ。