村上龍 特権的情人美食 村上龍料理&官能小説集 8

 村上龍「特権的情人美食」、「幻のジャズ・バー」。この短編の出典もとである「恋はいつも未知なもの」という作品は、すべての短編が幻のジャズバーというコンセプトで連ねかれた短編集です。

 このジャスバーを訪れる事ができたのは、社会的なステイタスがあり、何かしら恋愛に関するトラブルを抱えている中年男性ばかりです。憂鬱な夜、彼らの前に突如としてこのバーが出現するわけです。幻のというように、後でバーのあった場所を思い出そうとしても思い出す事はできません。

 このバーでは女性ヴォーカルによるジャスの名曲が演奏されています。そしてそれを聴いた男性達は誰もがその心安らぐ女性ヴォーカルに魅了され傷を癒して、憂鬱な夜から解放されていくのです。

 あぁなんて素晴らしいバーなんでしょう。傷を抱えて憂鬱な夜は、まっすぐ家になんて帰りたくないでしょ。何かによって癒されたいじゃないですか。だからってネクタイを鉢巻きにして演歌を歌ったりしてちゃダメよ!