村上龍 メランコリア 9

 世間をあっと驚かせた「エクスタシー」のエンディング。そんな事はすっかり忘れてヤザキの世界に浸り、そろそろ読み終わろうとしていると、あぁっ、なんとまたしても「エクスタシー」の悪夢、再び。

 村上龍「メランコリア」も、最後の最後に常軌を逸する急展開を見せます。「エクスタシー」で免疫があるとはいえ、ヤザキの独白にすっかり酔って心地よい倦怠感に包まれてしまっている読者には、あまりに衝撃的ですね。ミチコに待ち受けていた運命とはミヤシタのそれと同じだったワケです。

 この作品、物語の導入部分では「エクスタシー」を彷彿とさせます。しかし続くメインパートであるヤザキの独白で憂鬱と倦怠の世界に展開し、「エクスタシー」を期待した読者を裏切ります。そしてこのアンニュイな世界を好きになりかけた矢先、やっぱり最後は「エクスタシー」に回帰してまたも読者を裏切ります。もちろん歓迎すべき裏切り。傑作です。

 さ~て「タナトス」でも読むか。ヤザキ達の宇宙に終わりはない。