村上龍 メランコリア 5

 「エクスタシー」は「ゴッホがなぜ自分の耳を切ったか、わかるかい?」などという、読者が思いっきり興味を引きそうなセリフでスタートしますが、ミヤシタがそれらしき回答をしただけで答え合わせは行われません。

 何故、ヤザキのような人物がホームレスをしているのかという物語の核心を思わせる問いも、「エクスタシー」では最後まで答えには触れず終い。ところかわって村上龍「メランコリア」、ミチコがヤザキ本人にホームレスの理由を聞きに行くという設定。やっとこれでスッキリ、当然きちんとした答えが明らかにされると思うでしょ。ところがどっこいあやふやなまま!

 あのぉ、小説の常道としてこういうのアリなんですかね?

 アリなんでしょう。だってカタオカケイコとヤザキの独白による彼らの強烈なキャラだけでお腹いっぱいですもん。更に仰天のエンディングが別腹のデザートですよ。そもそも龍さん自身がそんな問いの事など、どうでもいいと思ってますよね。こんな事が許されるのは村上龍だけでしょ!