村上龍 メランコリア 4

 「エクスタシー」では、全体の4割にも及ぶページがカタオカケイコの独白に充てられていました。しかしそんな事に驚いていてはてダメです。村上龍「メランコリア」でのヤザキの独白は、なんと7割ものページを使っています。

 カタオカケイコの独白がピンポイントで一瞬のうちにターゲットを破壊してしまう威力を持っていたのに対して、ヤザキの独白はスローで優しくしっとりしています。疲れた中年男性が、自分の半生の恥部をランダムに告白しているだけのようにも思えます。感じるのは極度の憂鬱感と倦怠感です。

 それにしてもこの落差は何ですかね。こんな独白でヤザキはミチコを支配できるんですかね。僕は圧倒的にカタオカケイコの独白の方が好きです。ですが僕が男性だからそう感じるのであって、読者が女性であった場合は?

 ヤザキの独白って、ウイルスみたいなモノだと思うんですよ。いつ侵入されたかの自覚も無いままジワジワと体を蝕まれ、気付いた時には手遅れ。もしかして破壊力という点においてヤザキはカタオカケイコ以上なのかも?