村上龍 ストレンジ・デイズ Returns! 10

 「お前は無力だ。映画、笑わせるな、そんなものいつできるんだ、できるわけがないじゃないか」。村上龍「ストレンジ・デイズ」は、ジュンコを老政治家に預けた後に、圧倒的な無力感に襲われた反町が、何をする気にもなれず、ただ行くあてもなく環状線を車で走り続けるシーンで幕を閉じます。

 びっくりするほど暗いエンディングです。これが最後まで読み続けてきた読者に対する仕打ちですか。龍さん、ヒド~い!

 ところがです。最後に反町はこう考えます。「誰もが単に時間をつぶしていてそのことに気付かず死ぬまでそれで終わってしまう世界、昔オレはそういう世界にいた。この世の中には退屈と憂鬱だけがあって、いつの間にか人間はそのどちらかを選ぶ。そして今、嘔吐しそうなくらい憂鬱だが、その他に何かしたいことはないし、昔に戻りたいとも思わない」。

 憂鬱こそが希望と再生へのスタート地点って事ですか。深いなぁ。反町の最後のセリフ、「うん、感じとしては、悪くない」。