村上龍 エクスタシー 11

 村上龍「エクスタシー」。快楽という世界を垣間見てしまったミヤシタが、びっくりするほどの急角度で転げ落ちていったその先には。

 この物語はアッと驚く展開で幕を閉じます。エンディングの意外さという点では、龍さんの作品の中でも群を抜いているんじゃないですかね。ホントに鮮やかで秀逸なエンディングです。実はこのモチーフ、1990年刊行の「Ryu Book」というトリビュート本の中で、小作品として一度登場しています。

 結局、カタオカケイコもレイコもミヤシタに指一本触れてないんですよ。彼女達がミヤシタにした事といったら、ただ話をしただけ。たったそれだけです。ミヤシタのような一般的な前途ある青年の人生を、いとも簡単に変えてしまう「エクスタシー」の宇宙。ほんのちょっとでいいから覗いてみたいですか。でも読者という立場でのみ参加しているのが一番イイかもね!

 この作品は「メランコリア」「タナトス」とを合わせて3部作構成となっています。ヤザキ達の宇宙には終わりがない。