村上龍 エクスタシー 6

 村上龍「エクスタシー」。この小説の特徴は、ミヤシタという形式的な語り手を用意しておきながら、カタオカケイコにおそろしく長い独白をさせる事によって、実質的な語り手が彼女になっている点です。つまり彼女が語り手、ミヤシタは読者に対しては語り手ですが、実際は彼女の聞き手です。実はこのプロットこそ、この作品の持つ破壊力の源泉だと思うんですよ。

 ミヤシタは、彼女が誰かに恥ずかしい格好をさせられているという胸が苦しくなるような嫉妬心と、これまでの自分の生き方には何の快楽もなかったのだという幻滅感とで、ボロボロになっていきます。

 彼女が直接読者に語りかけるよりも、独白によって加速度的に自己を喪失していくミヤシタというフィルターを通して間接的に語られる方が、よっぽどスリリングだしリアルなんですよ。そして読者も巻き込まれます。

 いつのまにか読者もミヤシタに同調し一緒にボロボロになっていく。読者が語り手に感情移入するという点を利用した巧みなプロットですね!

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