村上龍 エクスタシー 5

 村上龍「エクスタシー」。この作品の核はカタオカケイコの独白です。ミヤシタに対して、ヤザキとのDrugとSMの日々を延々と語るのです。なんと小説全体の内、2分の1弱ものページが彼女の独白に割かれています。

 この独白の内容は本当にスゴいです。DrugとSM。想像を絶するとはこういう事を云うのだという見本のような世界です。解説で龍さんがこう書いています。「常識というのはその人間が準拠することができる情報の体系のようなものだ。独白を聞くことによって聞き手の常識は揺さぶられる」。揺さぶられるというレベルじゃなく破壊されるっていうカンジです!

 つまりこの独白がもたらすものは、逢った途端に彼女に支配されてしまったミヤシタが、究極のエロティシズムを聞かされる事によって、更に自己を破壊されていくという過程です。これこそが最大の読みどころなんですよ!

 カタオカケイコの前でミヤシタに出来る事は何も無い。そして読者もまた、彼女の前で為す術もない。あっ、僕、当然ダメです!