村上龍 エクスタシー 3

 村上龍「エクスタシー」。ミヤシタに声を掛けたホームレスの男がヤザキです。「エクスタシー」の宇宙に住む3人の内の1人です。わざわざニューヨークでホームレスをしてるくらいですから、タダ者じゃないですよね?

 ヤザキは若くして大成功を収めた実業家で、2年前まで超有名なミュージカルプロデューサーとして知られており、富と名声を武器に快楽を追求し続けた男です。Drugと女性に囲まれたスイートルームでの日々。

 ミヤシタはヤザキの問いに反応したというよりは、ヤザキ本人に反応しており、ヤザキは人を惹きつける圧倒的な魅力を持った人物ってワケです。

 この作品の導入部が優れている点は、何故、ヤザキのような人物がニューヨークでホームレスをしているのかという一見下世話な疑問、しかし一般的な読者にとってこの上ない関心事を、のっけからさりげなく提供している点なんだと思います。だって、ゴッホの問いとホームレスの理由だけで、一挙にグイグイ読ませますからね。やっぱり天才の仕事か?