村上龍 368Y Par4 第2打 9

 村上龍「368Y Par4 第2打」。この作品の最大の読みどころは、やはり最終章でのゴルフシーンです。小説タイトルにもなっている368Y Par4の16番ミドルホール、その時点でケンタロウは予選通過ラインぎりぎりなのですが、第1打で信じられないミスをしてしまいます。

 そして第2打です。ケンタロウは起死回生の第2打をイメージすることができるのか。ギャラリーの中にはカギヤがいます。このシーン、闘っているのはカギヤでもあるんですよね。ケンタロウの第2打が象徴するもの。

 ゴルフに限らず、スポーツだけが持つ特有のカタルシスってありますよね。想像を超える訓練から生み出された研ぎ澄まされた技術を、目の当たりにしたときに感じるあのカタルシスです。この作品にはそれがあります。

 僕はこの作品の最終行を読み終わったとたん不意に涙が溢れました。スポーツ固有の圧倒的なカタルシスに包まれながら、カギヤとケンタロウのこれからの人生を想った時、涙しないでいるなんてできなかったです。