村上龍 368Y Par4 第2打 5

 村上龍「368Y Par4 第2打」。カギヤが大学生の頃、アパートの庭で近所のガキとボール蹴りをしてうさを晴らしていたその中の1人が8歳のケンタロウです。ケンタロウはいつも何か遠くを見つめるような目をし、お前はいつもどこを見てるんだという問いに、ここはつまんないんだと答えます。

 こことは日本であり、ケンタロウに日本とか世界というカテゴライズなんて無いんですよ。スゴいです。まだ8歳ですよ!

 そしてカギヤ自身は全く覚えていないのですが、8歳のケンタロウに深く刻み込まれたカギヤの一言、これが手紙を送ってくる理由となっている事が後にケンタロウの告白によってわかります。

 ケンタロウの遠くを見つめる目は、若き日のカギヤの目であり、つまらないと叫んだのも、本当はカギヤで、ケンタロウとは若き日のカギヤ自身なんですよ。この作品は世界を相手にひとり闘うケンタロウの物語であると同時に、過ぎ去った時間を取り戻すためのカギヤの闘いの物語でもあります。