村上龍 368Y Par4 第2打 2

 村上龍「368Y Par4 第2打」。主人公はイベントプロデューサーのカギヤ。主にスポーツイベントを手掛け、年齢は40。80年代の土地本位制によるバブルマネーを背景にして仕事を順調に拡大させ、ホテルのスイートルームをオフィス代わりにし、世界各地の高級リゾートを知り尽くし、両親に大切に育てられた頭のいい女を何人も愛人に持っている。

 えっ、スゴすぎる。っていうかうらやましい~。金も、仕事も、女性も。男性にとってみれば究極の成功ですよね。ねぇ。でしょ?

 しかしカギヤは、40歳を前にした頃から、次第に大きなコンプレックスに囚われるようになります。何かから遠く置き去りにされているという焦りや苛立ちに襲われるのです。その何かとは「世界」です。

 自分は日本を相手にしか勝負していない。日本はモノを考え抜きモノを作り出す快楽を知らない。コピー製品の量産による金とバブルマネーを相手にしただけだ。世界を相手にしていない。自分は世界から取り残されていると。