村上龍 昭和歌謡大全集 9

 村上龍「昭和歌謡大全集」は、「コインロッカー・ベイビーズ」から「半島を出よ」に至るまで延々と流れる、破壊系譜の中の1つですよね。

 ですが他の作品と破壊の構図が微妙に違います。破壊者とは異端者であり、破壊のターゲットとは腐った日本・腐ったシステム・腐った人間、または外部の強敵。これがいつものパターンですよね。今作品は2グループどおしの破壊合戦で、しかも双方が破壊者とターゲットを兼ねています。

 そもそもオタク青年達にしろミドリ会オバサンにしろ、ホントにどうしようもない人間達です。本来なら真っ先に殺られるハズの人達です。それがターゲットになってはいるものの、なんと破壊者としても参戦するワケです。

 実はこの作品、最後まで読むといつのまにかターゲットが変わっているんですよ。オタク青年達とミドリ会オバサンは、純然たる破壊者に生まれ変わっています。最後の兵器が何を破壊したのか。それはいつものように腐った日本、腐ったシステム、腐った人間です。