村上龍 昭和歌謡大全集 4

 村上龍「昭和歌謡大全集」の6人のオタク青年達。彼らは正確にはオタクではありません。他を圧倒する何か特別な趣味のようなモノを持っているワケではないからです。強いて言えば外見がオタクって事なんでしょう?

 「半島を出よ」のイシハラグループの少年達は、それでも特別な何かを持っていましたよね。「昭和歌謡大全集」の彼らは何も持っていません。何も持っていないばかりか、積極性の欠片もなく無気力で、社会と関わっていこうという気などサラサラなく、若くして既に人生を諦めています。

 何の存在感も示せない彼らですが、1つだけ周りの者を一瞬で凍らせてしまうような特異な一面を持っています。それはバカ笑いです。さして可笑しくもないような場面で、狂ったように異常に笑い続けるのです。

 この作品の持つ明るさ、脳天気ぶり、呑気さ、馬鹿さ加減は、彼らのキャラのおかげでしょう。彼らのキャラ+殺し合いだからカッコいいんですよ。彼らのキャラなくして殺し合いをテーマに作品を書いてもカッコ悪いだけです。