村上龍 ライン 6

 20人以上いる村上龍「ライン」の主人公。その内の何人かには児童虐待 Child Abuseの過去があり、それが重くのしかかっているように感じ取れます。残りの何人かについては、Child Abuseの過去があったのかどうか書かれていません。あったのかもしれませんし、なかったのかもしれません。

 「ピアッシング」の2人の主人公は、Child Abuseの過去に全ての根源がありました。一方の「ライン」の主人公たちの場合は、Child Abuseの過去との関係が「ピアッシング」に比べれば曖昧なワケです。田口ランディさんが「ピアッシング」が嫌いで「ライン」が好きだという理由はそこにあります。

 ランディさん曰く、何でもかんでもトラウマに因果関係をつくってしまったら、生きている意味がない。シミュレーションとか予測のできるような狭い範囲でしか人間が生きられないはずはないと。

 確かに納得。それにしてもなんというポジティブな発想。感動的ですね。「ライン」の境地というのは、実はそのヘンにあるんじゃないですかね?