村上龍「半島を出よ」は、物語の最初から最後までを登場人物を視点とした徹底的な描写で通しています。これってかなりスゴくないですか?
龍さんが24人もの視点人物を配した本当の理由は、これじゃないかと思うんですよ。これだけ大がかりなストーリーになると、どうしても視点人物が知り得ない情報も書かなければならなくなりますよね。視点人物が1人又は少数だと、作者自身が視点となり、描写ではなく説明でまかなうしかありませんよね。今回、龍さんはそれを嫌ったんじゃないかなぁ。だからありとあらゆる場所に非常に多くの視点人物を配したんじゃないかと。
そして彼ら24人をフルに使って、視点のブレの一切無い究極とも思える描写を実現したワケです。この作品のオモシロさや読みやすさを裏で支えているのは、紛れもなくこの一貫した描写なんだと思いますよ!
1000ページを、作者視点の説明を一切使わず、全て登場人物視点の描写で通す。相当に高度な技術が必要とされるんでしょうね!