村上龍 半島を出よ 12

 村上龍「半島を出よ」。ストックホルム症候群ってあるでしょ。閉鎖空間において人質が犯人によせる感情です。高麗遠征軍によって占拠され、日本政府によって封鎖されてしまった福岡市は閉鎖空間であり、武力制圧ですから福岡市民は人質、高麗遠征軍は犯人という事になります。

 更になんと12万人もの後続部隊を乗せた船団が北朝鮮を出航し博多港へと向かいます。他国からの侵略です。侵略される側の恐怖をいったいどれだけ想像できるでしょうか。想像すら及ばない究極の恐怖ですよね?

 福岡市民は日本政府を信頼するより、高麗遠征軍に協力を申し出る方が、自分達の生存にとって圧倒的に有利である事に気付きます。この有利であるという思いが、無意識のうちに高麗遠征軍への信頼に繋がり、好意の感情へと変わって行くんですよね。まさにストックホルム症候群!

 ストックホルム症候群というのは、自らが生き延びる為の、切実で純粋なギリギリ最後の防衛本能なんじゃないですかね?