村上龍 半島を出よ 4

 村上龍「半島を出よ」。この作品の大きな特徴は視点人物の多さです。非常に多くの視点人物が次々と入れ替わっていくワケです。といっても「ライン」のように時間軸の進行に合わせて入れ替わるのではなく、同じ時間軸を立場の違う複数の人物が視点となりストーリーを描写していくのです。

 同じプロットを持つ「愛と幻想のファシズム」「希望の国のエクソダス」は、前者が異端者たちの視点、後者が第三者的なメディアの視点で描かれていました。ところが「半島を出よ」は、それらに加え超優秀な外部の敵(高麗遠征軍)や、無知で無能な日本政府の視点でも描かれているのです。

 この作品のカバーに使われている写真は、福岡上空の高度680kmからの衛星写真です。何人もの視点人物を使ってあらゆる視点からストーリーを描写していくという手法は、このカバー写真のように広角で非常に高い位置を起点とし、更に高性能ズームで全容をとらえる事に似ていますよね? 

 まるで物語の司会進行役が、超ハイテクなGoogle Earthのようです!