村上龍 ライン 8

 村上龍「ライン」のあとがきです。「この数年、幼児虐待や殺人・自殺願望、ボディピアスや援助交際といったネガティブなモチーフで小説を書いてきて、このラインに到達したような気がする」。ここで龍さんは到達という言葉を使っていますよね?

 「ライン」というのはネガティブモチーフ作品群の究極であり集大成なんですよ。そういえぱ以前、「寂しい国の殺人」がネガティブモチーフ作品群の総括だという記事を書きました。「寂しい国の殺人」は「ライン」と同じ1998年の発表です。「ライン」で完成し「寂しい国の殺人」で総括したワケです。

 そう考えると「ライン」はターニングポイントであり、その後は希望に大きく軸足を移し、現実からの脱却をより具体的に描き始めたんだと思います。「共生虫」「希望の国のエクソダス」「最後の家族」「空港にて」。「JMM」や「13歳のハローワーク」は言うまでもありませんよね?

 全てが「ライン」の現実を受け入れる事から始まったんじゃないですか?