村上龍 海の向こうで戦争が始まる 6

 村上龍「海の向こうで戦争が始まる」。多くの読者がそこで読み進める事が出来ずに本を閉じたのではないかと思われる場面があります。

 いつ死んでもおかしくない患者だけが移される病室に3時間前に移された母親は、薬の副作用によりたった1日で顔が全く変わってしまっています。母親はそんな自分の顔をまだ見ていません。母親が「メロンが食べたい」というので、息子は買いに出ます。ですが町は祭りの真っ最中、見物客の出入りが規制された広場の中で、息子は身動きがとれなくなってしまいます。

 母親は鏡を見てしまったのではないだろうか。その顔を見て狂ったりしてないだろうか。それよりまだ生きてくれているのだろうか?

 僕は再読時のこの場面で、不思議なことに龍さんの存在を強く感じちゃったんですよ。普段小説を読んでいる時にその作家を意識することはあまり無いですよね。僕はこの時ものすごく龍さんを感じたんです。狂った凶器のような作家村上龍、その作家の類い希な想像力を。

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