村上龍 海の向こうで戦争が始まる 5

 村上龍「海の向こうで戦争が始まる」。衛兵の家族がサーカスを見に行くエピソードの中に、非常に官能的に感じる場面があります。それは衛兵の妻が泥酔した男2人にからまれる場面です。

 以前「オーディション」の山崎麻美が官能的だという記事を書きましたが、それと同じ感覚を衛兵の妻にも持ってしまうのです。麻美はとびきりの美人ですが、衛兵の妻は眼が細くあか抜けた感じも全く無く、間違っても綺麗だとは言い難い女性です。どうしてこの場面が官能的に感じるのでしょう?

 実は理由は女性側にあるのではなく、衛兵の妻を取り巻くその周りにあります。からんだ男2人の容姿や服装、陳腐なサーカス小屋、サーカス小屋を取り巻く群衆、強いては町全体、これらがあまりに不潔で汚いからです。

 女性と周りの対比という点では、衛兵の妻でさえ麻美を優に超えてしまうのです。官能という感覚が必ずしも女性側の要素に起因するのではないとあらためて感じさせる場面です。龍さんの狙い通りでしょ?

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