村上龍 海の向こうで戦争が始まる 4

 村上龍「海の向こうで戦争が始まる」は、断片的な4つのパートに分かれています。4つのパートには各々、野犬を殺す少年達、狂った大佐、サーカスを見に行く衛兵の家族、病院で死を待つ母親とその息子が登場します。

 彼らは皆、海の向こうの町の住人ですが、4者の間に繋がりはありません。彼らはこの町において中流のはずですが、町自体が暗く汚いために、彼らをとても貧困なイメージにさせています。そして彼らに共通している事が1つあります。それは全員が苛立っているということです。

 ところで海の向こうの町はちょうど祭りの日を迎えているのですが、この祭りの描写が秀逸です。「リオ・デ・ジャネイロ・ゲシュタルト・バイブレイション」でのリオのカーニバルと同じです。結局、祭りとは狂気なんですよね?

 そしてまたしても祭りを使って描いた狂気が、4者の登場人物の苛立ちとシンクロし、苛立ちは狂気へと変貌していくのです。スゴい!