村上龍 海の向こうで戦争が始まる 3

 村上龍「海の向こうで戦争が始まる」。瞳のレンズに最初に映る海の向こうの風景は、想像を絶するようなはきだめの場所です。

 暗い空に湿った空気、腐乱の臭いが満ちるはきだめの場所。無造作に落ちている腸詰めの肉、腐乱した牛乳、犬や猫や牛や豚の死体、飛び出した内蔵、油まみれの魚と貝。そして群がるカラスと野犬と虫。全ての五感を麻痺させなければ、そこにいることのできない世界です。その場所で3人の少年が、野犬の肉を売ろうと考え、交尾中の一方の野犬の頭に、鋏を突き刺し殺します。

 これは僕の勝手な想像なのですが、処女作「限りなく透明に近いブルー」はあまりの非道徳さから、ある種の権威からは認めてもらえなかったですよね。なので2作目に当たる本作品では、あえて前作以上に醜悪な世界を描き出すことで、そのような権威を挑発してるんじゃないかな?

 作品の冒頭のはきだめは、打って付けのカウンターアタックなんですよ!