村上龍 ニューヨーク・シティ・マラソン 7

 村上龍「ニューヨーク・シティ・マラソン」収録の「蝶乱舞的夜総会」。龍さんはかなりの頻度で作品に虫を登場させます。共生虫がその代表でしょう。しかし虫の描写でサイコーなのは「蝶乱舞的夜総会」です。

 無限に近い数の羽虫の大群、ドラム缶の倍の胴体で顔を持つ産卵体。この作品での虫は奇想天外なモンスターとして描写されます。非常にオカルティックな描写で、何度読んでも鳥肌が立ちます。大好きです。

 しかしながら物語はオカルトではありません。プロのダンサーを目指す女性マーヌが主人公。マーヌは誰よりもダンスが好きです。「踊れよ、マーヌ!」とお客さんに言ってもらう事が夢なのですが、上手に踊ることが出来ないためにストリッパーとしてしか認めてもらえません。

 物語は産卵体との遭遇で一変してしまうマーヌの一生を描きます。夢を見る事って、その一方でその人にとって過酷でもあるんですよね。ただ一言言ってもらいたいだけなのに、「踊れよ、マーヌ!」って。