村上龍 ニューヨーク・シティ・マラソン 5

 村上龍「ニューヨーク・シティ・マラソン」収録の「メルボルンの北京ダック」。12年前に子どもを亡くしたという夫婦が主人公。夫はホテルのドアマン。

 ある日夫はオーストラリアン・オープン・テニスに参加するためにホテルに宿泊していたあるスウェーデン選手の中に、亡くした息子の面影を見いだし、思いがけず妙に心が浮きだちます。

 子どもの頃に描いていた夢が何一つ実現せず、あえてその頃の夢を忘れようと努める夫と、足の病気の為にいっさいの外出をしなくなってしまった妻。この夫婦が、大会開催期間中、亡くした息子と同化したそのスウェーデン選手の活躍を追うことによって、かつて2人にあったその輝きを次第に取り戻していくという物語です。

 この主人公達の年齢になった時、大事な何かを諦めてしまっているという事ってアルと思うんですよ。それでも強烈にキラキラした別の何かに触れる事で、少しでも取り戻せるのなら。正直、泣けます。

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