村上龍 寂しい国の殺人 4

 村上龍「寂しい国の殺人」。

 龍さんは90年代に入り、児童虐待・援助交際・無差別殺人・ひきこもりなどネガティブなモチーフの小説を連続して書いてますよね。「寂しい国の殺人」はそれら一連の作品群を近代化の終焉という言葉で総括しているような感じがします。これらネガティブな事象が日本においてあたりまえのように顕在化してきた背景は、結局のところ日本が寂しいからってワケです。

 もう国家的な目標はない。「いい学校、いい会社に入れ、女の子はいい会社で安定している人と結婚しろ」。この言葉がそのまま幸せに繋がるわけではないということを、子ども達はとっくに気付いているのです。

 そう考えると「寂しい国の殺人」は、90年代に連続して書かれたネガティブモチーフ作品の総括という位置づけも然りですが、もっと言うとJMMから始まって「13歳のハローワーク」などに繋がっていく金融や教育関連作品の出発点となっているとも言えるのではないでしようか。意外に重要な一作なんですよね!