村上龍 オーディション 7

 「ピアッシング」のヒロイン千秋には、最後に僅かながらの希望が与えられました。村上龍「オーディション」のヒロイン麻美はどうだったのでしょう。残念ながら麻美に希望は与えられませんでした。あとがきで龍さんはこう書いています。「誰も彼女を救えないし、彼女には救いという概念がない」。

 では「オーディション」に希望は無いのでしょうか。僕は希望はあったように思います。この作品の希望は、青山の息子で15歳になった重彦なのではないでしょうか?

 重彦の登場する場面は多くありません。にもかかわらず読後に重彦の存在だけが非常に際だって感じられます。それは物語が進むにつれ青山が子どもとして重彦を見ず、一人の大人として自分のパートナーとして重彦を見るようになるからなのだと思います。以前の記事で書いた事が、ここでの重要な伏線となっているワケです。

 このような惨劇があった後でも、重彦の未来は明るいと思わざるを得ないし、重彦がいる限り青山もまた立ち直れるのだと思います。

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