村上龍 希望の国のエクソダス 7

 村上龍「希望の国のエクソダス」を非常に重厚なモノとしている理由の1つに、龍さんの金融経済の知識があると思います。特に物語の中盤で、日本及びアジア通貨基金が国際金融資本の通貨アタックを受ける場面では、その知識がふんだんに盛り込まれ、恐ろしくリアリティがあります。

 「希望の国のエクソダス」に登場する大人達は、はじからダメな大人達ばかりなのですが、やはり市場だけは別であり(市場のプレーヤーは大人のハズなのに)、シンプルで合理的な市場の様子が、ダメな大人達という概念から切り離されて表現されています。

 しかしながらこの部分、通貨アタックの場面はこの物語のクライマックスの1つでもあるワケです。欲を言えば誰か重要な登場人物を為替ディーラーにして、ディーリングルームからリアルタイムでこの通貨アタックを描写して欲しかったと思います。

 由美子さんが経済ジャーナリストではなく為替ディーラーだったのなら完璧だったのにって思うのは僕だけじゃないでしょ?