村上龍 限りなく透明に近いブルー 7

 SEX, DRUG & Rock ‘n’ Roll の村上龍「限りなく透明に近いブルー」は、同時に哀しみの物語でもあります。もしかしたら龍さんの小説の中で一番哀しいんじゃないかな?

 「限りなく透明に近いブルー」のSEX & DRUGは、快楽の為のSEX & DRUGじゃないんですよ。むしろ自傷行為としてのSEX & DRUGです。やり場のない怒りや哀しみが外へ外へと向かっていく「コインロッカー・ベイビーズ」に対し、「限りなく透明に近いブルー」は自分の中へ自分の中へと向かっていきます。その形が自傷行為としてのSEX & DRUGになっていくのだと思います。

 しかしこの痛々しいまでの哀しみはリュウだけのものですか。自分の19歳を振り返るとき、やっていた事はリュウと全然違っていても、リュウと同じ哀しみを持っていたように感じます。

 僕にはリュウの哀しみがなんとなくわかります。自己実現へのあくなき思いを秘めながらも、いまだ社会に対して何の影響力も持ち得ない19歳の哀しみです。