村上龍 どこにでもある場所とどこにもいないわたし 2

 村上龍「どこにでもある場所とどこにもいないわたし」。ホントにタイトル長すぎ!

 収録された8編はいづれもテーマは希望です。ここ最近、僕の中での最重要キーワードとなった感のある希望についてふんだんに描かれています。またこの作品での希望は他の作品以上にストレートで分かり易いです。そして龍さんにしては珍しくすがすがしい作品群です。あっ失礼!

 この国には何でもある、ただ、希望だけがない。これは「希望の国のエクソダス」の有名コピーですが、これはそのまま「どこにでもある場所とどこにもいないわたし」にも当てはまります。執筆時期も同時期ですね。

 スペシャルエンタテイメントの「希望の国のエクソダス」に対して、「どこにでもある場所とどこにもいないわたし」はひとりひとり個別のささやかな希望を描いており、こちらの方がリアリティがあります。また、対象が1個人であるだけに切実でもあります。なかなか傑作です。