村上龍 ピアッシング 6

 とは云っても、村上龍「ピアッシング」は読者によって極端に好き嫌いが分かれると思います。以前の記事で書いたように児童虐待シーンを読者が受け入れられるかどうかに拠ると思いますが、でもそれも突き詰めていくと、そもそも川島と千秋にリアリティを感じるかどうかではないかと思います。

 児童虐待シーンや2人の主人公の行動に対して、これは村上龍という作家が想像力のみで描き上げた世界で、自分たちが暮らす現実世界とは関係のない世界であると思えてしまった場合、嫌悪感もあってこの世界を理解することができず、オモシロイとは感じないと思います。

 一方、このような虐待は日々どこかで行われているだろうし、川島や千秋のような人間も自分たちの周りに居るのでは、そしてほんのちょっと何かがズレていれば自分も川島や千秋になっていたのではないか、こう思えたときに。

 リアリティが生まれた「ピアッシング」は恐ろしくオモシロイ。再読した時、僕は後者となっていました。