村上龍 ピアッシング 3

 村上龍「ピアッシング」の2人の主人公、殺人衝動を持つ川島と自殺願望を持つ千秋。現実世界ではのっけから毛嫌いされてしまうようなこの2人ですが、小説の中の2人には不思議と惹かれます。

 川島は鋭利なアイスピックでまだ赤ちゃんの我が子を刺したいという衝動が抑えられず苦しみます。それでこの恐怖から解放されるには実際に行動を起こすしかないと考えるワケです。ですが行動を起こす相手を赤ちゃんではなく家族以外の者にすることで、川島は実質的に家族を守ろうとします。

 一方の千秋は自分への自傷行為への衝動をコントロール出来ません。優しくしてくれるボーイフレンドが出来ても千秋の自傷行為を目にした途端にみんな千秋から離れていってしまう。そして自傷行為の一端として片方の乳首にピアスをし、そのピアスが千秋の精神的な唯一の拠り所になっています。

 2人の精神の破綻は子どもの頃の虐待に原因があり、2人には何の責任もありません。僕は2人にシンバシーを感じますし、とても愛おしくも思います。不思議な魅力を持った2人です。