村上龍 ピアッシング 2

 村上龍「ピアッシング」を最初どうしても好きになれなかったのは、児童虐待シーンがあまりに凄まじかったからです。こんなヒドい事が現実にあるのだろうかと思うような場面が頻繁に登場します。

 ここまで書く必然性があるのかどうか当時の僕には分かりませんでしたし、とにかく何よりヒド過ぎるのです。それでも何とか読みきれたのは児童虐待シーンが川島と千秋の回想場面にしか登場しなかったからで、小説の中でリアルタイムで虐待されていたら最後まで読めなかったでしょうね。

 じゃあ何故、僕が7,8年後に再読した時にすんなり「ピアッシング」の世界にナジメたのでしょう。「ピアッシング」は1994年の作品。あれから10年以上が過ぎ児童虐待は日々のニュースの中でごく普通に垂れ流されています。多分、僕の側が児童虐待に慣れてしまってきているのだと思います。

 龍さんが執筆当時に調査した事例、その時は氷山の一角であったモノが時代と共に表面化し社会にその姿を表しているのかも知れませんし、龍さんの書いた世界にやっと時代が追いついたのかも知れません。悲しいことですね。