村上龍 69 sixty nine 5

 村上龍「69」のケンの行動力には圧倒されっぱなしなのですが、そのケンの行動における全ての動機は、ヒロインのレディ・ジェーンにモテたい、それだけなんです。単純明快で痛快ですよね。それにしてもヒロインの愛称がレディ・ジェーンですよ。カッコいい。Stones Yeah!

 2人は物語の最後で、レディ・ジェーンの作ったお弁当を片手に冬の海に初デートに行きます。海だけでは時間を持て余すと考えたケンは映画を観ることを提案し、いつものように知ったかぶって、この映画は有名なんだと「冷血」という映画を観ます。これが最悪の映画で。

 結局、2人はお弁当を半分も食べられない程、意気消沈し疲れ切っちゃうんです。冬の海をバックに、好きな女の子の前でごく普通の高校生の姿を見せてしまうケンに、思いのほか共感しこちらまで妙に切なくなる胸を打つシーンです。あぁ青春。思いっきり青春。これでもか青春。青春バンザ~イ!

 ケンの1969年は、このほろ苦い初デートのエピソードで幕を閉じます。