村上龍 悲しき熱帯 4

 村上龍「悲しき熱帯」収録の「ハワイアン・ラプソディ」は「悲しき熱帯」の中でも一番有名で、「だいじょうぶマイ・フレンド」のベースになった作品です。また最近刊行された「はじめての文学・村上龍」にも収録されています。

 老いて現役を引退した80歳の飛べないスーパーマンが、なんとか飛行技術を取り戻し、故郷のクリプトン星に帰ろうとする物語。滑稽で不器用なこのスーパーマンの「大事なのはスタイルだ。自分のスタイルを守ることだ。」という頑固な姿勢がとても切ないです。

 スーパーマンの飛行訓練に協力する僕とハズミンも魅力的です。特にハズミンは、明るくて元気な姿の向こう側に、ある種の弱さを併せ持った女の娘で、この本のあとがきで栗本慎一郎さんが「龍さん自身がハズミンに恋している。」とまで書いています。僕もです!

 はたして、切ないスーパーマンはクリプトン星に帰れたのでしょうか。そんな事はあまり重要ではないと思わせてしまう圧倒的な力が、熱帯のハワイにはあるみたいです。行きた~ぃ!